第6章 手をのばすは夢の中
商店を後にした僕は、アパートに着く頃だったが、頭に浮かんだ忘れ物を思い出して元来た道を走っていた。
p.m 20:09
まだ休むには早い時間だ。
きっと、彼女は起きているだろう。
信号で止まっている間に胸ポケットに触れれば感じる、歪で硬く小さな感触。
確かに、そこにある。
きっと探しているに違いない。
この 青い結い紐を
浦原商店で、井上さんに声をかけられたんだ。手渡されたのは、所々千切れている小さな紐だった。
「これ、石田くんのじゃない?」
「いや………僕じゃないね。これがどうかしたの?」
「偶然拾ったんだ。汚れてるけど、キラって光って見えてね。なんだろーって見たら、紐だったの。
そっか、石田くんじゃないなら、これは石津さんのかなきっと」
「どうして彼女のだってわかるんだい?」
「いつも髪縛ってるし、体育で縛りなおしてるの見たことあったなぁって今思い出したの………。
こんな小さくても綺麗に結んでて器用だよね」
「そっか。………今は彼女、茶渡くんと話してるみたいだから、終わったら渡してあげるといいよ」
襖の向こうを指差して井上さんに伝えると、そう言えばと思い出した風に声を上げた。
「………………………あ!私みんなでお開きになったらすぐに帰らなきゃ行けないから、変わりに石田くんが渡してくれないかな?」
「えっ⁈」
「………お願いします、石田くん!」
「わかったよ。僕はあくまでも代理だ。
井上さんからだって伝えるからね」
「うん、ありがとう!」
そんな経緯があって、今は僕の手元にある。
近道にと、人通りを避けた中道の角を曲がると、人にぶつかってしまった。
謝り返そうとすれば、急いでいる石津さんで少し驚いた。
事情を聞こうと僕は彼女に話しかける事にする。