第5章 サイドストーリー *ふたつめの贈り物*
「大事にしたいと思う物を実穂様にもらったから、貴方が大事にする物を、私も必ず護ろうって決めていたんです」
「大事にしたい物………」
「名前です。普通は義魂丸には付けないですよ。でも実穂様は………私に言ってくれたから」
夕暮れの中、お店まで戻る道。
さらりと吹く秋風が心地良かった。
『せっかく一緒に居るんだから、貴方の事を名前で呼びたいな』
『………名前ですか?私にはニャーミと名前があります』
『それはあくまで、商品名であって貴方自身のものじゃないんじゃ…あれ?どうなんだろ?
とにかく!
偶然私が貴方を選んだのかもしれないけど、斬魄刀とは違うもうひとりの相棒として、私は貴方を見てる。
大事にしたいんだ。だから嫌じゃないなら………どうかな?」
そんな事を言われるなんて、夢にも思わなかった。
私達は所詮道具で、それ以上でも以下でもない。
それでも、心はあるんだ。
楽しければ笑うし、嫌なことははっきり言う。
悲しい時は涙を流す。
人とは違う存在だけど、確かにある"私の心"
道具ではなく仲間として私を見ていると、この方は言ってくれたのだ。
そんな人に会えた事が、たまらなく嬉しかった。
『あの…………実穂様に名付けて貰えないでしょうか』
『大事なことだし、自分で決めなくていいの?』
『だからこそ、です。貴方に呼ばれた名を頂きたいんです』
『わかった。ちゃんと考えるから、私に時間をください』
目に止まった、見たことのない一輪の華。
名は、アネモネと呼ばれるらしい。
持ち帰って浦原さんに質問したそれを手に取り、暫く考えたのちに、ポツリと溢した言葉。
『モネってどうかな?』
『………モネ。なんだか、優しい響きの名前ですね』
『うん、なんだかしっくりくるね』
それから、何故だかわからないけどお互いに笑い合って。
くすぐったい様な、ふんわりした気持ちになった。
その日から、胸を張ってモネと名乗る。
大事な物が出来て、毎日がより明るくなった。