第4章 過ぎゆく秋空の日々
手持ち無沙汰になってしまった僕は、それでも勉強が終わるまで待つ事にした。
すっと視線を彼女に向けると、真剣な眼差しで勉強している。
やっぱり、似ている。
幼い日のあの子に。
それは石津さんが僕等と一緒に過ごす様になってからも、感じていた事。
でも、違うと感じる事もあって。
人の為には真っ直ぐな思いを伝えたり、全力で頑張るのに、自分の悩みは中々言葉に出来ない。
優しくて不器用なところ。
石津さんを見ていて、そうゆう所は違うんだと思う。
当たり前なんだ。石津さんは彼女じゃないのだから。
でも、そんな姿を見ていると僕の記憶の中の彼女と重なるのではなく、石津さんが僕の目には映る。
そうか。
なんだ、そうだったんだ。
今朝感じた、"何かが以前と違う"ということ。
僕は、石津さんの事をちゃんと見れているんだ。
はたと気が付いた事で、何故か急に恥ずかしくなる。
彼女が真面目に取り組んでいるのに、何を考えているのやら。
石津さんに気付かれないかと内心ヒヤヒヤしながら、眼鏡を直す。
「あの……石田さん」
「なっなんだい? 」
思わず、変な声で応えてしまった。
「終わったので、採点していただけないかと思って………」
「ああ。わかった、見せて」
不思議そうに此方を見てくる彼女に、咳払いをしてどうにか平静を装う僕。