第4章 過ぎゆく秋空の日々
放課後になって、僕と彼女は教室にいる。
誰もいないからか、シンと静まり返っていた。
「黒崎さん達、大丈夫でしょうか………」
「僕は黒崎に関しては心配なんてしてないよ。井上さんや茶渡くんだって、決して弱くはないからね。
それより今は、時間をくれたみんなの為にも勉強しなくちゃ」
「はい。頑張ります!」
石津さんは心配そうに窓の外を見ながら、ぽつりと一言。
無理だろうとは分かりつつ気にしないよう声を掛けて、やんわりと彼女を促せば、気持ちを切り替えたのか、元気な声が返ってくる。
少し前に虚退治の指令が入ったのだが、彼女の変わりに僕以外のみんなが出向いて行ったのだ。
僕も彼女も、全員で対処すればいいと言ったが、黒崎に却下された。
「勉強しないと石津自身が後で困るだろ!」
「石田が教えないと意味ねぇよ。俺らじゃ分かりづらいだろうし」
なんて言葉を残して。
茶渡くんや井上さんはもともと行く気満々だったから、苦笑いながらもそのまま同行して行った。
そうして、今に至る。
気を取り直して、僕は鞄から一冊のファイルを取り出した。
「はい。今回のテスト範囲になぞらえて、僕なりに勉強する所をまとめてみたんだ」
予想外だったのか、驚いた顔の彼女。
「これと一緒に教科書の問題を解いたり読み込めば、次の追試は大丈夫だと思うよ」
「えっ!わざわざ…ありがとうございますっ!」
受け取りつつ、僕にお礼を伝える。
「朝言っていたことは何だったのかな?」
「実は、ここなんです」
ノートを開いて始まる、数学の勉強。
教室には、微かに走るペンとページをめくる音が優しく聞こえていた。