第4章 過ぎゆく秋空の日々
「なるほど、朝から大変だったね。でも流石にこれは………」
僕はいま教室にいる。
茶渡くんや黒崎から、今朝感じた虚の気配が気になって聞いていた。
かなり早い時間だから、みんな眠そうにしているのもわかる。
だから、目の前の光景も仕方のない事だと思っているつもりだ………けど。
視線の先には、机に突っ伏したままピクリとも動かない石津さんが。
微かに寝息が聞こえるから、寝ているのはわかるのだが、片耳にイヤホンを挿したままで熟睡している。
この様子なら、リスニングの教材を聞いて途中で寝落ちてしまったんだろう。
いつか見た光景だな…とか考えていたけれど今はそれは置いておく。
大丈夫なんだろうか
疲れてるんじゃないか
そう、思わずにはいられなかった。
「河原から帰るときは普通だったんだが、疲れてるんじゃないか?」
「まあ、石津はいろいろやる事多いしな」
「でも、あと10分でホームルームだし、起こさなきゃだよね」
茶渡くんの言葉は僕の心境と全く同じで。
黒崎や井上さんも同じように思っているのは見てわかった。
「石津さーん、起きて。おーい」
井上さんが肩を揺すって声をかけるも、無反応の彼女。
かれこれいろいろ試したが、眠りが深いのか一向に起きる気配がない。
「どうしようか。自分で起きるのを待つ?」
「大丈夫だよ、石田くん。とっておきの一言があるから!」
半ば諦めつつ僕はそう口にすると、にこりとしながら呟いた井上さんは、すぅーと息を吸い込むと………。