第4章 過ぎゆく秋空の日々
部屋に着いた私たちに黒崎さんは、開口一番怒られた。
「おせーよお前ら‼︎」
「すっすいません…」
「石津さんが謝ることじゃないよ。ドリンクの機械が混んでただけなんだから」
「まあ、何もないならいいだろう一護」
「15分も掛かるかよ…。だいたいな「ああもう、うるさい。わかったよ僕が悪かった」
「悪びれもねー言い方だなっ!」
石田さんの言う、嘘も方便の内容。
"ドリンクが混んでたから遅くなった"だそうで。
彼らの言葉が聞こえて、私は内心申し訳なく思う。
ぎゃいぎゃい話す二人に、収める茶渡さんの何時もの様子を苦笑いで見ていると、井上さんが心配顔で聞いてきた。
「そんなに混んでたんだね、あんまり帰らないからどうしたのかと思ったよ」
「主に私の所為なんです。やり方が分からなくて困ってたら、人が来てしまって」
「じゃあ石田くんが来てくれてよかったね。見に行ってくるって席を立ったから、私達も任せちゃったんだ」
「………………え?」
笑顔の井上さんの言葉に私はキョトンとする。
「飲み物のおかわりに来てると思ったんですが…」
「石田くん何も持ってなかったよ?」
お互い頭に疑問符を浮かべてしまう。
井上さんは、茶渡さんに呼ばれて其方に体を向けて、それでも私は考えていた。
どうして私にはみんなが心配してたなんて言ったんだろう。
もしかして……わざわざ来てくれた?
石田さんを盗み見ていた私は、不意に此方を見た彼と目が合う。
が、視線を外してしまった。
何故だか見れなかった。
そんななか、茶渡さんの声が聞こえた。
「そろそろ時間もなくなるが、どうする井上?」
「本当はまだ石津さんと歌えてないから居たいけど、今日はみんな疲れてるしお開きにしよう!」
にこにこと笑う井上さんの顔を見て、私も頷いて答える。
「今度は私も井上さんと歌いたいです!」
「なら計画たてようね」
そんな様子を、男性陣はやれやれと思いながら笑って見ている。
「しばらくは勘弁だぞ…」
「そんなこと言って、なんだかんだ参加すると思うよ君は」
「………確かにな」
カラオケから出れば、家路に向かう人々がちらほらといる。
いろんなことを1日で経験できた私は、みなさんと共に夕暮れの中を帰宅した。