第4章 過ぎゆく秋空の日々
「石津さんどうしたの?」
声の方向を向けば石田さんがいた。
紙コップを持っているところを見ると、私と同じでお代わりを取りにきたのだろう。
「なかなか君が戻らないからみんな心配してたよ?」
「すいません。機械のやり方が難しくて、手間取ってました」
「初めてなら、確かにわからないね」
苦笑いでそう伝えれば、機械を一瞥した石田さんは、顔だけ此方に向いて納得顔でそう答えた。
ピッと音がしてけたたましい機械音が近くでした。
音につられて顔をあげると、石田さんの後ろ姿を捉えた。でもさっきの溜息を聞かれていたのではないかと、私は内心慌てていた。
やがて飲み物を手にした石田さんは、そのまま私にひと言。
「僕も少し休んでいいかな?」
「………………もちろんですよ」
一瞬固まった体をすぐに動かして、そう答える。
私の心は、更に慌てるのだった。
人ひとりぶんの間隔を空けて、私と石田さんは長椅子に座っている。
お互い飲み物を飲んで、少ししたらまた飲んでを繰り返していて。
つまりは、無言の時間が流れている。
それを断ち切りたくて、私は石田さんに先程のカラオケの話をした。
「さっきの歌合戦、楽しかったですね!」
「そうだね。普段はあんな事しないんだけど、みんなもテスト終わりではしゃぎたかったのかもしれない」
「みなさん歌も上手だし、すごく笑ってましたもんね。石田さんの歌はすごく爽やかで、聴いてて素敵でしたよ」
「あれは………黒崎との勝負に勝つためだったから。必死だったんだよ」
カチャリと眼鏡を直す仕草をして、そっぽを向いてしまう。
心なしか…耳が赤い様な気がする。
まさか、照れてたり…するのだろうか。