第4章 過ぎゆく秋空の日々
「井上織姫、歌わせていただきます!」
「頑張ってください!」
「まっかせといてっ!」
井上さんの元気な声に声援を送った私は歌を聞いた。
"la la la♩"
♪♩♭♩♬〜♩♬〜♩♪♩♬〜♩♪♩♬〜
すごく井上さんにピッタリだった。
元気で明るくて、思わず一緒に口ずさみたくなる様な、そんな曲。
終わって点数がでれば、茶渡さんより点数は上だが満点にはあと少し足らなかった。
「悔しいな〜」
「でも、高得点ですよ!」
「今度は絶対取るよ!」
意気揚々と告げた井上さんが身につけていた、2つの小さなヘアピン。
それがふと目について、見入ってしまう。
可愛らしい水色の小さな花を象ったもの。
「………石津さんどうしたの?」
「きれいだなと思って、じっと見てしまいました。」
彼女の服にさり気なく付いていたヘアピンを
見ていた事に気付いた井上さんは、それを取る。
「お兄ちゃんからもらったものなんだ。これがあるから戦えるし、一人じゃないって思えるの。」
「大事なもの…なんですね」
言葉の端々から井上さんの思いが伝わる。
大事なんだと思う気持ちが。
じゃなきゃ、こんな優しい目で話さないから。
私は井上さんを見て微笑んだ。
井上さんもそれを見て、微笑みかえしてくれた。
「すごい和やかだね」
「いいんじゃないか」
「待っててやろうぜ」
私達の様子を見ながら、男性陣がそんな話をして暖かい目線を送っているとは知らなかった。