第4章 過ぎゆく秋空の日々
かなり賑わっているようで人通りも多い。
「ルキアがそんなこと言ってたのか?」
「あ、そうなんです。なんかすっきりするし、皆さんとわいわい出来て楽しかったって。」
「そっか。つーか石津は歌えんのかよ?」
「失礼ですね。歌のひとつやふたつ、軽いですよ」
和かに話す彼女と黒崎の会話が耳に届いて其方を見れば、笑っている彼女の横顔が見えた。
あの夜から、少しずつ彼女と話す様になったけど。
あんな風に話しているかと言えば、違う。
相変わらず、挨拶がメインで。
他愛のない話といえるものは少ない。
ちゃんと、名は呼んでいる。
他の人には些細なことでも、僕にとっては大きな事だから。
でも急には、今の黒崎みたいに話すなんて僕には難しいみたいだ。
自分で作った壁に阻まれるって我ながら滑稽だ。
それでも。
あんな風に楽しそうにしている彼女を見ると、なんだか。
なんだろ、モヤっと………違うな。
………………なんて言うんだろう、この感じ。
「………さん、石田さん」
「………えっ」
声が近くで聴こえて、其方を見れば不思議顔の彼女が近くにいた。
「お二人が戻りましたよ。移動するみたいです」
「ボーッとしてどうした?石田」
「いや。何でもない、今いくよ」
黒崎にまで怪訝な顔をしていて、自分が考えていた事なんて知るはずも無いのに、気恥ずかしくなった。
カチャリと眼鏡を直してひと息つく。
「顔が赤い様な…。暑いですか?」
「大丈夫だよ、気にしないで」
彼女に向けてそう言えば少し眉根が下がったけど、すぐに身を引いてくれた。
「声かけてくれてありがとう。」
「いえ…」
そうゆうと彼女は井上さん達の下に歩いて行く。
今は、とりあえず楽しもう。
せっかくの時間なんだから。
「さー歌うぞー!楽しみだね、石津さん」
「はい。頑張ります!」
「いや、カラオケは頑張る物じゃないぞ」
「マイクと飲み物持ったか?」
「待て黒崎、一気に持つな。落とすだろ!」