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BLEACH 叶わない願いをそれでも願う

第3章 響く音はひろがりとどく


角を曲がってすぐ。
視界に入ったのは




























茶渡くんだった。













「………っどうしたんだい、茶渡くん。」

「いや、お前と別れてから店に戻る姿がみえたから。気になって、な。」

「そう…………。」


まさか見られていたなんて。


驚きと動揺を消したくて、眼鏡を直す。




「井上さん達はどうしたんだい?」

「一護が送って行った。夜も遅いしな。」


話を変えたくて、その場にいない井上さん達の事を聞いてみた。


あっさりと終わった話の後に、広がる無言の空気。





徐に挙げられる手には冷えた缶コーヒー。
不思議に思っていると、茶渡くんはぽそりと呟いた。



「俺は、突然コーヒーを飲みたくなって買ってた。この自販機揃えが良くて悩むんだ。」

「………え」



茶渡くんの視線の先には確かに一台の自動販売機。



ほんとだコーヒーだけで6つもあるって…違う。



「悩んでやっと選んだ。飲んだら帰るとこだ。」


ぐっと飲み干されるコーヒー。





それは、つまり………。


何も見てないって、聞いてないって事を言いたいんだろうか。







カタンとゴミ箱に落ちる缶の音を聞きながら
僕は理解した。



言い出せずにいる僕に、茶渡くんは…気を遣ってくれたんだと。

少しわかりずらかったけれど。





ふっと優しい瞳が僕に向いて、彼が立っている場所に向かって追いつく。





「…………良かったな、話せたみたいで」

「そう思うかい?」




茶渡くんの言葉に疑問を問うと、ふっと笑った。



「少なくとも、俺にはそう見える」



なんて言っていいか分からずに、黙ってしまう。



「仲間だからな。わかるさ」



はたと足を止めて、ゆっくりと歩く彼を見る。





深くは聞かない。でも、そこにいてくれた。
それは、彼なりの優しさなんだろう。

今はそれが、すごく僕にはありがたかった。





開いてしまった距離をうめて、僕は茶道くんと途中まで帰った。



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