第3章 響く音はひろがりとどく
彼女と分かれて、僕は帰り路を歩き出した。
銀筒を渡して、告げた自身の今の思い。
初めて呼んだ名。
きっと、どれもが彼女にとって驚きだっただろう。
『夢かと思って醒まそうと』
『名をよばれたの、初めて…ですから』
そう告げながら実際に顔まで抓る姿を見ると、自分の考えは間違いでは無さそうだったから。
その姿に少し…面白くも意外だなと感じた。
そんな事するとは思わなかったから。
まだ自信はないけれど。
少しずつ向き合えばいいと思ってる。
自分の心にも、彼女自身にも。
そんなふうに考えて曲がり角へ足を進めると、視界が捉えた人に僕は驚く羽目になる。