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BLEACH 叶わない願いをそれでも願う

第3章 響く音はひろがりとどく


「それじゃあ、今夜はこれで。」
「はい。ありがとうございます。」

お礼を告げて暫しの無言。


居た堪れずにいると、石田さんが分かれの挨拶をしたから、それにぺこりと頭を下げる私。



なんと言うか、歯切れの悪い石田さんの様子が気にはなるけど。

またまた長い沈黙。
どうしたんだろう、本当に。























「石津さん」






  




ピクンと体が、耳が、動いたのが自分でもわかった。



いま  名前をよんで、くれたんだろうか?




聞き間違いじゃ…ない


「何してるんだい………」
「夢かと思って醒まそうと」


自分の頬を抓って、痛いと感じた。
夢じゃない。


石田さんには微妙な顔をされたけど、驚きに再び目を見開いてしまう。


「おかしな事するんだな、君も」
「名をよばれたの、初めて…ですから」

私の言葉に、かちゃりと眼鏡を直して石田さんはぽつりと呟いた。


「いつまでも失礼な事はしたくないんだ。
自分の気持ちとちゃんと向き合うって、君自身を見るってきめたから。」


真っ直ぐな瞳で伝わったその言葉に、今度は私が黙る。


何に対してとは、石田さんは口にはしなかったけれど、その言葉に私の心はふわりとした。




        重なる視線 
        向き合う体 
       真っ直ぐ届く声



どれもが、私たちの間には無かったから。

今こうして、石田さんがそれをしてくれている事に心が動いた。

トクンーーと小さな音がして。
目を逸らせずにいる。



「それじゃ、ゆっくり休んで。暖かくするといい」
「はい………そうします」


「おやすみ 石津さん」
「おやすみなさい 石田さんっ」



去って行く彼に急いで告げる。
その姿が見えなくなるまで、私は見送った。


夜風が髪を撫でていく。



なんだろう、この気持ちは。

くすぐったい様な、ふんわりした様な。

名をよばれた   初めて
声が響いて 耳から離れない


『いつまでも失礼な事はしたくないんだ。
自分の気持ちとちゃんと向き合うって、君自身を見るってきめたから。』

『おやすみ  石津さん』


なんだか、胸がいっぱいで。

キュッと胸の前で手を握る。


かちゃりと鳴った銀筒を大事に懐にしまう。
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