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BLEACH 叶わない願いをそれでも願う

第3章 響く音はひろがりとどく



瞳をまん丸にして僕を見ている彼女に近づく。

帰って行ったのに戻って来れば、確かにそんな反応をするんだろう。




目の前までくると、ぽつりと彼女は呟いた。





「…忘れ物ですか?」
「いや………」




言葉に詰まって、でも戻った目的を彼女に話す。


「浦原さんの話を聞いて、渡しておこうと思ったんだ。」



制服の胸ポケットから出したのは、二つの銀筒。




「もしまた薬が必要なら、手元にあった方がいいだろうから。」




差し出した手の中で、月明かりを受けて優しく光るそれを、しばらく彼女は見つめていた。


居た堪れずにいる僕。




「わざわざ、渡しに来て来れたんですか?」

「………何かあったら、君が困るだろうから。」


彼女の言葉に、早口で返した。



キョトンとした顔の彼女が、次にはクスリとしていて。


「あの時と…同じですね」

「え?」

「石田さんが冊子を渡してくれた時です」


















『………教科書。
まだ届いてないだろうから。』

『………………え?』


『いいんですか、使っても。』


『無いと困るのは君だろう』



















「確かに………」
思い出して、合点がいく。


彼女の手が動いて、僕の手から銀筒を受け取る。

カランと涼やかな音。
彼女の手の中で、静かに筒同士がぶつかって鳴った音。



大事そうに持つ彼女を見ていたけれど、眼鏡を治してわざと視線を外す。






気恥ずかしい。
なんだろう、これは。




「ありがとうございます。いろいろ。」

「別に………。黒崎やみんなにも言われたかもしれないけど、気にしなくていいんだ。」

「それでも、です。言わせてください」





彼女の言葉に再び目を向けると、にこりと優しい笑顔があった。

何故だか、彼女の顔があまり見れない。





あんなに色々話た後の気まずさと、今のこの雰囲気の気恥ずかしさが、ごちゃ混ぜだからか。

本当に、なんだろう。
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