第3章 響く音はひろがりとどく
私の体調が落ち着いたことで、皆さんはそれぞれ帰宅する事となった。
時間が遅くなってしまったが、テッサイさんのスペシャル晩ご飯を頂いて賑やかに過ごした。
「それじゃまたな、石津」
「ゆっくり休め」
「あったかくして寝てね!」
「はい。体を労ります」
黒崎さん 茶渡さん 井上さん
お一人ずつご挨拶してい………あれ石田さんがいない。
キョロリと周りを見ると茶渡さんが呟く。
「石田なら、浦原さんに呼ばれてたな。」
「なんだよ、早く来いっての」
「きっとすぐだよ」
井上さんの言葉に頷くしかない私。
すると、ガラリと引き扉の開く音で石田さんは現れた。
噂をすればなんとやら、だ。
「遅くなってすまない。」
「まったくだ。」
「だから謝ったじゃないか。」
ムッとして話し出す黒崎さんと石田さんだったが、井上さんの仲裁で落ち着いた様だ。
「本当に今日はありがとうございました」
私は皆さんに一礼をする。
「だー!そうゆうのはいいって言っただろ。堅苦しい!」
「石津の気持ちは充分伝わってる」
黒崎さんと茶渡さんの言葉に詰まってしまう私は、井上さんの笑顔を見た。
「でも、石津さんらしいよね。」
そのひと言でほっとした。
チラッと石田さんを見ると眼鏡を直している。
「時間も遅いですし、皆さんも気をつけてくださいね。」
私は声を掛けて皆さんを促した。
去って行く皆さんの後姿を見つめる。
なんだろう。
石田さんが声を掛けてくれるかもしれないと、期待でもしていたんだろうか。
二人で話した時に見たふっと笑った顔や言葉を聞いたからなのか。
少しだけ………近づけた気がしたんだけど。
それはやっぱり、気がしただけの様だ。