第1章 出会い
あ、そういえば昨夜…
ひとしきり笑った後に、ふっと父の忍びである大野との会話を思い出した。
「潤様。」
「ん?どうした、大野。」
「はい。実は、伊賀伝統学園には私の愚息も通っておれますゆえ……お気を付けください。」
とかなんとか言ってたな。
あの大野の息子か……
実に興味深い!
「あ、あのさ。」
俺はまだじゃれあっている二宮たちをそのままに、櫻井に声をかける。
櫻井はすぐにこちらを向いてくれた。
「『大野』ってやつ知ってる?」
俺がそう口にした瞬間、一気に教室中が静まり返った。
あ…れ…?俺なんかまずいこと言った…?
コホン
櫻井の咳払いにより
氷の中のように凍った空気が幾分かマシになる。
何人かの生徒がこちを見てコソコソ話していたが、その視線を無視して櫻井が口を開いた。
「潤、大野家は忍びの一族の中でも一、二位を争う程の有力な家系だから、大野姓の生徒は何人かいるんだ。」
櫻井の目が険しくなる。
「でも、もし潤の言っている『大野』ってやつが次期頭首の『大野智』なら、接触するのは避けた方がいい。」
「え…どうして?」
次期頭首の大野なら、俺の言っている『大野』と同一人物である可能が高い。というか、俺の父の忍びが頭領なのだから、ほぼ間違いなくそいつだろう。
「うん。智くんは中等部の頃から勉強以外が飛び抜けて優秀で、彼を側近に…と望む者は多いんだけど…
なんというか…」
「俺が言えないけど、人間としてなにか欠如してるんですよ。」
二宮が考えるようにして言った。
「物凄い強いんだけどね。俺なんて手も足もでない。」
相葉も二宮に続くようにそう言う。
その時、何かを感じたのか相葉が窓の外をサッと見て、窓に近づく。
「松潤、噂をすればほら、来たよ。」
四人で窓から下を覗く。
「うん、あれが『大野智』だ。」