第3章 一歩
「潤、悪かったな。」
「どうして…」
最後まで言う前に櫻井が俺の耳元で囁いた。
「お前は自分で思ってるよりずっと智くんが好きだよ。」
「は!?」
櫻井は赤くなっていく俺を、ははっと笑い飛ばして立ち上がった。
「素直になれ。潤。お前は智くんのこと、」
「やめろ!違う!!」
俺はパンイチで立ちあがって殴りにかかる。
でも、櫻井は鮮やかにその攻撃を避けて、
じゃあね〜、とクスクス笑いながらトイレから出て行った。
「くそっ!待て!」
追いかけようと思った俺を大野が止めた。
「おい、んっ…」
文句を言おうとした俺の口を大野が塞いだ。
噛み付くように重ねられる。
舌が絡まり、再び壁に押さえつけられた。
「んっ…んぅ…」
息が出来なくて、大野の胸を押す。
そっと離れた唇。はぁ、と大野が吐いた息も俺が吸い込む。
口内に大野の香りが漂い、俺はずっとその香りを留めておきたくて、今度は俺から唇を重ねた。