第3章 一歩
「……。」
大野はむぅっと顔で俺を見た。
「ほら、笑え。笑ってる時の顔のが似合ってんだから。」
びっくりしたような顔で俺を見て
少し恥ずかしそうに目を泳がすと、今度は拗ねたような顔をした。
「俺、睨んでねぇもん。」
「わかってるよ。」
俺は大野の頭をゆるっと撫でる。
「わかってるから、ほら。笑えって。」
「潤…」
大野は下唇を噛み締めると、ふわっと俺に抱きついた。
「ふっ…まったく。俺がいる所では笑っとけ。」
「でもあいつら…俺を怖がってる。」
俺にしか聞こえない声で呟く。
そんなヤツらと喋りたいわけない。
と俺に更にぎゅっと抱きついてきた。
「大野、大丈夫だよ。俺がいるから。
だいたいお前は怖がられるような奴じゃないよ。
みんなお前をよく知らないだけだ。」
優しく頭を撫でてやる。
「少しずつでいい。俺の友達と友達になってやってくれないか?ここにいるみんな、お前と友達になりたいんだ。」
「潤…わかったよ…」
「ありがとう。」
俺がそっと微笑むと大野も微笑んだ。