第3章 一歩
「大野?」
櫻井たちが他に注意を向けている時に、大野にしか聞こえないであろう声で話しかけた。
「ん?どうした?…メロンパン欲しい?」
「いや、いらねぇから。」
「仕方ねぇなぁ。ちょっとだけだぞ?」
「いや、人の話を聞け!」
俺がそう言い終わるが早いか、
大野がメロンパンを齧ったと思うと、おもむろに俺の後頭部を引き寄せた。
「んぅっ!!…んん!!!」
唇が重ねられて、大野の唾液混じりのメロンパンが押し入ってくる。
「んっ!」
必死に舌でそれを押し返す。
暫くそうやって争ってると、ザラっとした大野の舌が俺の舌に当たった。
「んっ!」
俺は動揺して舌を引っ込めてしまう。
その隙にメロンパンが口内に入ってきて、
おまけに大野の舌まで俺のを追って入ってきた。
ゴクッ、、
ねっとりと絡まる大野の舌に気を取られて、口内のメロンパンを飲み込んだ。
大野が更に顔を傾けて、舌を中に奥に入れて来ようとするものだから、俺はたまらず大野を力一杯投げ倒した。
「痛てえぇぇ!!!」
「お前最悪だよ!!」
「なんでだよ!メロンパン欲いって言ったじゃん!」
「言ってねぇよ!!っざけんな!!」
「えーー!なぁ、もう一回!!」
大野がなおも顔を寄せてくる。
パコーーン
(もうお決まりになった)大野の頭を叩いた。