第3章 一歩
「へ〜そんなことがあったんだ。大変でしたね。」
事件から数週間たって、学校にも慣れてきた頃、俺らは屋上で昼を食べていた。
「まぁね。ところでなんでいるんだよ?」
「一緒にお昼食べたいからに決まってるじゃん!ね〜和!」
「そそ。売店いったら3人で歩いてんだもん。行くっきゃないでしょ!」
売店で買ったであろうあんぱんをパクリと齧りながら二宮が言う。
俺と大野と櫻井が屋上に辿り着くと、後ろからダッシュで階段を駆け上がる足音が聞こえて、振り返るとこの二人がいた。
屋上は普段は入ったら行けないんだけど、まぁルールなんて無視な人達だから。
櫻井なんかは先生方にも一目置かれている存在だから、誰からも咎められないんだよね。
もちろん、俺一人じゃ問題だけどね。
そんなことより…
俺はチラリと大野を見遣る。
さっきから一言も発さない。
無口で黙々と売店で買ったメロンパンを食べている。
ここに来ようって言ったのも大野なのに。
まるで自分の影を消すかのように、俺のすぐ後ろを俺にもたれるように座っているのだ。