第2章 事件
「じゃあさ、」
「なんだ?」
「友達にならない?」
「 は?」
驚いて櫻井の顔を見る。
聞き間違いじゃないよな?
「何が狙いだ?」
「狙いって、はは。そんなんじゃないよ、友達になりたいからじゃだめ?」
何を企んでる?
グッと目を細める。
今までの俺には仲間はいたが、友達と呼べる相手はいなかった。
俺には必要なかった。無駄につるんで、はしゃいで何がいいのかがわからない。
人間関係もゴタゴタして面倒くさそうだし、その点、一人は楽だ。
それに、俺に「友達になろう。」と声を掛けてくるやつなんていない。
みんな俺に近づこうとしないのだ。
何か裏があるんじゃないかと思い、櫻井を見遣るが、至って純粋に言ってるように見える。
友達か…ふっ、こいつなら悪くないかもしれない。
「勝手にすればいい。」
「じゃあこれからは友達として、よろしく、智くん!」
俺の返事を読めていたのか、被せるように言い手を差し伸べてきた。
「…あぁ。」
俺もその手を軽く握った。
こうして、なんとなく俺らは友達になった。