第1章 出会い
「にしても松本潤か。なかなか面白いヤツだな。」
ボソッと呟いて、潤の席を眺める。
智くんとは話したことさえなかったが、中学の三年間は一緒の学校だったし、その噂はよく耳に入っていた。
その噂とは随分とイメージが違いすぎるが、
あの智くんが他人にあんな表情を見せるのは、
おそらく潤が初めてだろう。
「翔くん、授業始めさせて。」
近くに座っていた斗真が俺を揺さぶった。
あ、こいつは中学時代のサッカー部の仲間。
「ん?あぁ授業中か。」
たく!あの先生はなんのためにいんだよ!
先生なんだからしっかりしろよ…
俺は立ち上がって先生の前に行き目を合わせた。
「先生、しっかりしてください………」
しばらくじっと見つめる。
すると、はっと息を飲んで我に返る先生。
「すみません、授業中でしたね。…?何やってるんですか、櫻井さん。早く席に戻どって。」
授業は何事もなかったのように再開された。
「流石だよ!翔くん!」
「あぁ、まぁね。あいつは直ぐに術にかかる。」
はははっと笑う斗真を横目に俺は席に着いた。
ん?あぁ、智くんに松岡先生といった怖い二人に睨まれて意識失ってたから、適当に術かけて記憶無くしてやっただけだよ?
嫌な記憶は消した方がはやい。
さて、智くんと潤はどこまで行っているんだろうな。
俺は、窓から少し雲のかかる空を眺めた。