第10章 目覚め 【女ヶ島】
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翌朝、いつもの時間に竪琴が鳴り響くことはなかった。
だらだらと起きてきたクルーに、ローは“麦わら”とジンベエの移動を指示する。
引き続き治療に必要そうな薬品や器具を仮設の小屋に運び出し、最後にローの能力でルフィを移動させた。
アルコは切り立った岩壁の先端に座り、楽器の手入れをしているようだ。
その様子を 10m程 後ろから見ていたローは、次の瞬間 顔色を変えて駆け寄る。
ザッ…………………ザシュッ……!
「おい、やめろ!!」
ローに捕らえられた両腕。
片方にはナイフ
片方には髪の束
ローを見上げるアルコのひたいには、不ぞろいの短い前髪が乗っていた。
「とめないで。手伝ってよ、後ろも」
幼くなった顔で、何事もないように言うアルコに、ローはガックリと肩を落とす。
「お前………。
麦わら屋が目を覚ますかどうかは『祈り』や『奇跡』じゃねェ。『医療』……つまり『科学』だ」
「……ローは、そう思うの?」
短い前髪によって、挑戦的な目つきが強調された。
アルコは後ろ髪の根元を手でまとめ、ナイフを持ったローに差し出す。
ローはそれを無視して、馬のしっぽのような髪のほんの先っちょをつまみ、先端3cmほどだけを切り落とした。
指についた短い髪をピッピッと払いながら、ナイフをしまわせる。
「わかった。もう、いいわ。ローの『科学』に免じて」
クルー2人に抱えられながら岩壁を登るジンベエ。振り返ったアルコを見て、ため息のような声をあげた。
「今から、演奏する。
ロー、
誰も小屋に近寄らせないで。
素手で弾きたいから」