第10章 目覚め 【女ヶ島】
物資の運搬が終わり、潜水艦の停泊する岩壁に戻ってからもアルコは竪琴を弾くことをやめなかった。
岸壁の下の岩場に座り、満ちてくる潮に足場を奪われても、日が暮れるまでひとり弾き続けた。
ローによって、船長室に強制帰還させられるまで
*
「無理するな、熱が出るぞ」
「…………そうね、もう休む。ありがとう」
ローとアルコが同じ部屋で眠るのも、もうじき2週間になる。
アルコは初日こそ意識があるままローの腕の中で眠ったが、翌日からは薬の力を借り、ローのスキをついて早々にソファで眠った。
ローは眠ったアルコを自分のベッドに招き入れるのだが、アルコは起きる気配もない。寝たふりなのか、本当に寝ているのか。
悶々とした夜を過ごし、朝になると竪琴の音を合図にひとりベッドで目を覚ます。
(コイツ……ナメやがって)
ローはアルコの腕を捕らえてソファに押し倒し、覆い被さる。
当然のようにそうしてくるローに、アルコも当然のように抗議する。
「いや、無理無理!
明日は大事な日だから。やめて」
「…生理か」
「違うわ!」
─── ヒドい。
なんか、ヒドい。
医者め。
いや、こんなことしてる場合じゃない。
アルコはローを押し返し、立ち上がる。
「明日しかないのよ。私にできること。
最後の日になりそうだし、全っ部かけるんだから。こんな時は、ほら…処女性も大事にしないと」
「はっ。誰が処女だ、笑わせるな」
「うっさい! 処女『性』!!
私の中の清らかな部分のことを言ってんの!
……ちょっとルフィの顔見てくる」
「あァ!? お前…なんで麦わら屋が ───」
話が噛み合わないローを背に、開け放された処置室への扉を荒々しくくぐる。
「…………」
「丸聞こえじゃぞ」
身体を起こして新聞を読んでいたジンベエに、アルコは小さく「すいません」と言い、顔を赤くする。
いまだ目覚める気配のないルフィ。
ベッドサイドの椅子に座り、彼のひたいを撫でる。
「だって、明日は大事な日でしょ?
…絶対、目覚めさせてみせる」
「そうじゃな。わしも毎朝 聴いとるから、わかるよ。明日は絶対、大丈夫じゃ」
ジンベエの優しい言葉を抱えながら、ルフィのベッドに頭だけ預けて、アルコは少しだけ眠った。