第10章 目覚め 【女ヶ島】
「フンハ~へへ~ン、フフンフ~ヒー」
旋律の高低に合わせて、謎の言葉を口ずさむベポ。アルコは、思わず吹き出し演奏の手を止めた。
「ぶはっ。
ちょっと待って。そ、そんな風に聴こえる? ベポ、何て言ってるの?」
「え、ごめん。変だった? この曲ってさ、 歌は ないの?」
「歌……」
─── 考えたこともなかった。自分の竪琴は弾くことで完結していた。歌の伴奏をしたこともあるが、伴奏と演奏は、弾き方からして違うものだ。
「これって“麦わら”の曲でしょ? サビみたいなところ『めざ~めて~』って言ってるんじゃないの? おれ達みんな、そう歌ってるよ、毎朝」
みんな ─────
ハートのクルーのみんなだ。毎朝ルフィに弾いている この曲は、クルー達の目覚めの曲にもなっていた。
アルコは、『みんな』が毎朝そう『歌って』いることを知らなかった。
「他は?」
ベポにそう尋ねるが『目覚めて』以外の部分には共通の歌詞はついていないようだった。
「アルコは歌わないの?」
「う~ん……」
アルコは歌わない。歌うことは嫌いではないが、あまり上手いとも思わないし、練習しても上手くなる気がしないし、なにより自分の声が好きじゃない。
「でも、伝わるよ」
ベポにそう言われ、ハッとした。
アルコが毎朝弾いていた曲に『目覚めて欲しい』という想いを乗せていたことが、かろうじてクルーに伝わった程度だ。
心を深く閉ざしたルフィには、もっとストレートに届けなくては。
アルコは目を閉じ、揺れる台車の上で、もう一度演奏に集中した。