第9章 甘え 【女ヶ島へ】
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“女ヶ島”へ向かう航海中
ここ数日
毎朝、艦内には竪琴の音色が響き渡る。クルーはその音色を合図に起床し始める。
ローも同じく、船長室のベッドで目を覚ます。
昨晩も捕まえて眠ったハズのアルコの姿は、起きた時にはすでに腕の中になく、開け放たれた処置室への扉の向こうから竪琴の音が こぼれている。
アルコは毎朝、目覚めない“麦わら”に向かって竪琴を弾いている。力強いトレモロから始まる、あの曲。
処置室のホーンは開きっぱなしにされているので、音は艦内の隅々にも届き、船長室には扉の向こうからの生音と少し遅れたホーンからの音が輪唱して響く。
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ローが船長室から出ていった。
その気配を、アルコは演奏を止めずに見送った。ローが出ていく扉の音でジンベエは目を覚ましたが、心地よさそうに まどろみを続けている。
「おはよう、ございます」
演奏を終えたアルコは、目を覚ましたジンベエに挨拶をする。
「おはようさん。いい目覚めじゃ、ありがとう」
瀕死だったジンベエはずいぶん回復したようで、昨晩から食事もできるようになった。二人きりで言葉を交わすのは初めてだった。