第9章 甘え 【女ヶ島へ】
「その曲……。まるでルフィじゃ。自由で、力強い」
いつから聴いていたのだろう。アルコのすぐ後ろに“海賊女帝”ボア・ハンコックが立っていた。
アルコは振り返り、軽く会釈する。強く、美しいハンコックも、先ほどのジンベエの言葉に不安を感じているのだろう。二人はちょうど、不安を分かち合う相手を求めていた。
「そなた楽師か。なかなかたいした腕じゃ」
「アルコといいます。“女帝”ボア・ハンコック」
「…気遣いはよい。外海は広い」
片膝をついて挨拶をしたアルコは、再び竪琴をあぐらの中に携えた体勢で、その場に座りこむ。
「…………続けても?」
「構わぬ」
先ほどの続きを奏で始める。ハンコックが『ルフィのようだ』と言った曲。
ルフィとの初めて出会った東の海(イーストブルー)。
バラティエからアーロンパークに向かう小舟で、ルフィに何か弾いて欲しいとせがまれて演奏した曲だった。
“凪の帯(カームベルト)”の穏やかな海に響く竪琴の音色。
「きっと大丈夫よ。ルフィなら」
演奏が終わったアルコは、自分に言い聞かせるように言った。
相変わらず『信念』のために無茶をするルフィ。彼がこうなるまで闘うことは当然な気がするし、無事目覚めることも当然な気がした。
しかし、演奏を聴いたハンコックは違う決意を抱いていた。
「わらわは……たとえルフィが目覚めずとも“心”を置き去りにしようとも、生きてさえおれば……!
ルフィがルフィでなくなろうとも、
わらわにとって、ルフィはルフィじゃ」
「!!!
…………愛が、深いんですね」
「愛!!?
そう、これが……愛?!
わらわとルフィの恋を超えた関係……
はぁぁ~………それが愛!!!」
アルコが言った『愛』という言葉に、とたんに気丈さを捨て、酔いしれるハンコック。
アルコは肩をすくめて笑った。