第32章 約束
「ローは、“お友達”はいないの?」
なに呑気(のんき)なこと言ってんだ、という目つきを返される。
しかしアルコは、本気だった。
だって、ミホークとシャンクスの関係は、“友達”と称するに相応(ふさわ)しい。
アルコは、ローの過去を思った。
自分の知るローは、たったの2年間。彼はもっと前から海に出ている。ベポ達 ─── “仲間”と。
生死を共にし、時に命を預けあう“仲間”に囲まれてはいるが、“友達”と呼べる間柄の海賊はいないのだろうか。
ベポ達に出会う前から、ローは海賊の世界に身を置いていたという。フレバンスを追われ、“絶望”してから。
ローが過去にドンキホーテ・ドフラミンゴの“ファミリー”の一員だったことは聞いているが、そこに関わるすべての人達が憎いんだろうか。かつての“仲間”や“友達”と呼べる人物は、ひとりもいないんだろうか。
「…………」
しかし、ローからの返事はない。
それもそうか。笑顔で“友達”を作るタイプの人柄(ひとがら)ではない この男に、たくさんの“友達”がいるとは思えない。
でも、ミホークだって同じだ。人を寄せつけない気質は、彼とまったく同じだ。
『おじさまにだって、“友達”がいるんだよ?』
アルコは、その余計な ひと言を白湯と一緒に飲み込んだ。
「ルフィ達も……利用するんじゃなくて、仲良くしたら? 手を組む………みたいな」
「……」
ローは変わらず難しい顔をしている。
きっと何かを考えているんだろう。なにか“先”にある可能性を。
思案を巡らせるローの姿は、好きだ。
彼らしいし、頼もしい“船長(キャプテン)”らしいと思う。
アルコは立ち上る湯気をみつめて、シャンクスがかつてミホークの居城に来た時のことを思い出した。