第32章 約束
──── 翌朝
明らかに痛みのピークを越えた。
身をよじり、うめき声をあげないと逃がせない、いっそ死にたくなる程の痛みは過ぎ去った。痛み止めの効果が勝り始め、「もうこれで大丈夫」という安堵からくる精神的な効果も後押しして、笑顔をみせられる程の余裕も出てきた。
「がんばったな」
アルコはベッドの中で、毛布から半分だけ顔を覗かせる。首を横に振って、ローに小さく お礼を言った。
しかしアザの少ない足だけでこれだ
アザのたくさん残る左腕、そして上半身は ───
アルコは考えることをやめ、逆に痛みを探してそちらに意識を戻した。
*
──── 数日後
ベッドの上で新聞を広げるアルコのそばでローは本を読んでいた。その様子は何かを待っているようにもみえる。落ち着いてみえるが、どこか落ち着かない様子のローを不自然に思いつつも問いただすことはせず、穏やかな時間を楽しんだ。
この2年間、治療の後は二人で こんな時間を何度も過ごしたものだ、とアルコは思い馳せる。
私はベッドの上
ローはそのそばで過ごしてくれる
静かで 穏やかな時間
何も出来ないことが もどかしいが、アルコはいつも この時間を大切にしていた。
とくに会話はなくても、そばにいてくれるだけで嬉しい。彼の優しさが伝わってくるから。
……たとえそれは、“医者”としての優しさだったとしても
でも今回の患部は足だから、ひょっとして竪琴を弾いてもいいだろうか。一瞬その考えが浮かぶが、アルコは彼をチラリとみて自分自身でその提案を否定した。
きっとそんなこと
ローは許してはくれないだろう
優しいけれど
心配性で
厳しい“先生”だから