第32章 約束
昼になり、患部が違和感と共に本当に痛み出した。それにしても、治療の後の痛みの波が来るのが、いつもより早い。
まるで嘘をついたことを咎(とが)めるような痛みだ。
アルコは自分自身の特性を嗤(わら)った。
『痛み』より、『好きな』男に触れてもらうことを選んでしまう、自身の ─── いや、女の特性を。
しかし日が傾き始めると、そんなことを考える余裕すら なくなった。今までの治療とは比べものにならない程、その痛みは強くなっていく。表面だけでなく、内部から ─── 肉が、骨が、拷問のように途切れることなくジクジクと痛むのを、ただひたすら耐えた。
ローに頼んで、部屋の時計を伏せてもらった。
痛みを意識するたびに、視界に入る時計は ちっとも時間が経っていないことを指し示していて、腹立たしくなったからだ。
ローは懸命に処置を施した。両脚を固定しつつ、痛みを和らげ、熱を下げる方法を、身体の反応を確認しながら色々と試す。
アルコはローが部屋から出ていった時だけは、我慢することなく痛みを逃がすための うめき声をあげることが出来た。そのため、放っておいてくれることが最良の処置であるように思えたが、自分のために画策(かくさく)する彼に「出ていって欲しい」とも言えず、結局ひたすら耐え続けた。