第31章 arousal
「おれは“お前の医者”だからな」
自制心の強いアルコを慰める意味もあったが、結局のところ普段の状態では自分だけが求めているのかと無性に虚(むな)しくなって、悔しくもなったので言い訳のような言い方をした。
その言葉に反応したかのようにアルコは、それまで まごまごウズウズしていた動きをピタリと止めた。しばらくうつ向いていたが、コップの水を一気に飲み干した後には、いつもの気丈さが戻っていた。
吹っ切れたような、どこかあきらめの漂う笑顔。その顔をみて、後悔とともに本心が沸き上がる。
『おれは“アルコが好き”だからな』
本当は そう言いたいのに
どうしようもねェな
おれは
ローは自分自身を鼻で笑った。アルコの固く結んだ口もとに軽くキスをしてから、コップを取り上げ再び喉を潤した。
*
セックスの“後処置”をして、アルコの身体を確認した。
血液も調べたがとくに異常は見当たらない。長く“冬眠”した原因がわからないのと同様に、人が変わったように性的衝動を暴走させ暴力的になった原因もわからなかった。
「何か、思い当たることはないか? 普段と違うものを食べたとか飲んだとか」
「…とく、に…、は」
「そうか」
一瞬アルコの瞳が宙を揺らいだが、検査に使った器具を片付けていたローはそれに気づかなかった。