第8章 衝動 【マリンフォード 頂上戦争】
熱は、その日の午後には下がった。珀鉛を取り除いた左足首の痛みもずいぶん引いたが、安静を言い渡され、監視もついた。
アルコのそばで、ローは盗聴用の黒電伝虫の回線を開きっぱなしにして、新聞を読んでいる。
海軍の微弱な念波をキャッチするのを待っているため、竪琴を弾くこともできず、もちろん剣を振ることも許されず、新聞も全部読みきって暇を持て余していた。
「…!」
アルコは、ぴょんっとベッドから飛び降りる。
「おい」
左足をひょこひょこさせて、ドレッサーの上にある岩を手に『いいこと考えた』という顔をしている。
「ナイフ、あったら貸してくれる?」
「寝てろ」
岩を手にベッドに戻り、オーバーテーブルに古い新聞を広げ、ローから受け取ったナイフを使って岩を削り始めた。
岩にくっついている赤い珊瑚を取り出したいのだろう。その作業をみたローはシャチを呼びつける。
「お~、キレイじゃん! 削り出してアクセサリーにしてやろうか?」
器用で細工が得意らしいシャチがそう提案するが、アルコは出来るだけ自分でやると言ってやり方を教わり、必要な道具を借りた。
「アレにつけれるかな」
またベッドを出て取りに歩くと、ローに怒られそうなので、ドレッサーに置いてあるハートのネックレスを取ってもらう。
「ハート……だな」
「ハート、だよ」
「ハートか」
「ハートだねぇ」
「…………キャプテンが あげたんスか?」
「違うよ」
「違ェよ」
「………………」
妙な空気を さえぎったのは、電伝虫の念波だった。