第31章 arousal
アルコは めまいにも似た頭の中のモヤを必死に振り払う。時折 自分の制御を超えて暴走する思考の中で、欲望と理性を闘わせていた。
欲しい
食べたい
肉を 血を
誰でもいいから
─── いや、叶うなら
愛しい あなたの ───
すべてを
食らいつくしてしまいたい
アルコは そんな おぞましい思考に飲み込まれていた自分自身に気づき、戦慄した。固く目を閉じて頭を左右に振り乱す。
──── ダメ…!
そんなことをしたら
殺してしまうかもしれない
ローのことを
殺し、て…
……───?
そんなことをしてはいけないと、考えまいとすればするほど、その光景は鮮明に脳裏に浮かび上がる。猟奇的で刺激的な妄想に、震えるほどに興奮を覚えることを 抑えることが出来ない。
あぁ
メチャクチャに
噛みついて 啜(すす)って
激しく貪って
血まみれで生気のない様子でぐったりしている男に ─── いや、“あなた”にまたがって
グチャグチャに したい
アルコはベッドの上で身体を丸めうずくまってブツブツと うわごとをつぶやいている。
それを見下ろしながら、ローは服を脱ぎ捨てた。服の上から噛みつかれた箇所は、歯形のへこみと内出血痕がくっきりと刻まれていた。
(おれの心臓…、ここに無くて幸いだったな)
四角くぽっかりと空いた胸の穴を晒して、アルコの肩に触れた。それにビクリと反応するので、ローの方が一瞬たじろぐ。
脇腹から身体ごと引っ張りあげて顔をあげさせると、惚(ほう)けたような恍惚とした表情を向けられた。その表情に、無いハズの心臓が鼓動を高めたのを感じた。血が熱くなり、下半身が熱を帯びる。押し倒してしまいたいという衝動をどうにか抑えこみ、手錠を引き抜こうとしているアルコの腕を押さえてやめさせた。
手枷に触れてゆっくり外してやる。アルコは驚きと困惑の目をローに向けた。
「…ぇ……?!」
「やれよ、好きなだけ。食いたきゃ食え」