第31章 arousal
床に散らばった器具から鎮静剤と注射器を探し出し、注射器に装填して構える。しかしアルコは遠慮なく吠え散らしていて、なかなか近づくことができない。
ローは自分自身を枕と入れ替えて背後を取り、アルコの肩ごと後ろから強く抱き込んだ。
「…うッ…、」
前に回した腕に噛みつかれ、鋭い痛みが走る。しかしローはそれに怯まず、アルコが下を向いたことで あらわになった うなじに鎮静剤を打ち込んだ。
振りほどこうと揺らすと、噛みついた歯はさらに食い込んだ。キリッとした鋭い皮膚の痛みは、次第にズキズキと骨に響くような重くて鈍い痛みに変わる。
ローは注入しきって空になった注射器を遠くへ投げ捨て、後ろから両腕で締め上げるように きつく抱き締めた。
このまま落とすか
いや ────
眠らせたくない
どれだけ心配したと思ってるんだ
また眠らせたら
眠らせるくらいなら
「アルコ…、どうしたんだ」
「ぅ…、…、ぐ…」
明らかに正気ではないし、問いかけが聞こえているのかすら怪しい。しかし締め上げて眠らせることもしたくない。噛まれている痛みに耐えながら、結局そのまま抱き締め続けた。
しばらくすると鎮静剤が効いてきたらしい。噛みつかれた腕の痛みが和らぐと同時に濡らされていった。アルコは ぽろぽろと涙を流しながら、アゴの力を緩めているようだった。