第31章 arousal
アルコは自分で扉を塞いだのにも関わらず、自分で倒した本棚を乗り越えて必死にドアノブを回していた。
─── ガチャガチャと焦るように響く この音はなんだろう
その疑問で我に返り、自分がしていることにようやく気づく。制御できない自分自身が恐ろしくなり、今度は素早く扉から離れた。窓辺で震えてうずくまる。
嘘
なんで
私
何をやっているの
「おい、開けてくれ。あんた…、どうしたっていうんだ…?」
「嫌! 来ないでッ…!! もう、行って!!」
*
モネは3枚のビスケットを目の前にかざし、迷ったあげく そのうちの1枚だけを選び取る。
「種は撒いただけでは育たない。『お手入れ』して育ててあげることが必要だわ。あなたの選んだカードで…、どんな風に育つのかしら。あなたの中の『種』は」
*
アルコは身体がコントロールできず、部屋のあちこちに勢いよく倒れ込んだ。そのたびにデスクやキッチンにある本や皿を床に撒き散らす。大きな音を立てれば、その一瞬だけ正気を保てる気がした。しかしそれもほんの一瞬だけ。
どうしよう
どうすれば…── 欲しい 欲しい 欲しい
頭を抱えて床に転げる。部屋の隅の壁際に身体が打ち付けられた時、目の前のあるものが ─── 海楼石の手錠が目に留まった。何か策があるのか、ローがこの施設にあったものを集めて調べている、山積みにされた手錠。
意識のスキを突いて、アルコは自分自身を拘束した。ベッドの柵に引っかけた状態で自分の自由を、自分で奪う。
飢えてる、足りない、貪りたい
食べたい……── ?
いや、違う
欲しい 欲しい 欲しい
何でもいいから
誰でもいいから
「ッフー、フゥゥー…、ん、っああ!!」
喘ぐような叫びと ガシャガシャと手錠を打ちつける音は、吹雪が外の何かをガラガラと転がす音にかき消された。