第31章 arousal
「ホワイト・アウト!!」
野太い声とともに視界が白い煙に包まれる。ローは白煙を刀で切り裂き逃れるが、取り囲んでいた男達はひとり残らず煙に捕らえられた。
「わざわざ捕まえに行ってやる手間が省けたな」
「クソッ…、白猟(はくりょう)のスモーカー…!」
一瞬で一網打尽にされた海賊達はもはや抵抗する術(すべ)もなく、まとめてその場に座り込んだ。
「スモーカー中将!」
「ああ…、全員しょっぴいとけ」
部下の海兵らしき男達にそう指示をだしたスモーカーは、刀を納めるローに歩み寄った。
「七武海、トラファルガー・ロー…!」
「……」
スモーカーのその言い方には、どこか敵意が込められていた。馴れ合わずとも“七武海”のその立場は海軍寄りであるにも関わらず。
「…」
二人の間には重い空気が流れるまま、スモーカーはローの脇を行き違った。ローは刀を肩に担いで振り返り、その背中の“正義”に声をかける。
「助かった。早く戻りたかったんだ。…面倒はごめんだ」
「『戻る』、…どこにだ」
「……」
借りを作るつもりはないが、詮索されるつもりもない。ローはその質問には答えなかった。
(食えねェ野郎だ。しょせん“海賊”)
スモーカーがそのまま立ち去ろうとしたところに、再び声がかけられる。
「ああ、ひとつ聞きてェんだが」
「……なんだ」
勝手な男だ。
「どこに『戻る』つもりなのか」、自分はその質問に答えないクセに「聞きたいことがある」という。
しかし、スモーカーはその『質問の内容』に興味が湧いたので、無下にあしらうことをせず発言を促した。にもかかわらず、ローはなかなか口を開こうとしない。
「……」
「……?」
イラついた様子でスモーカーは葉巻を噛む。
『何が聞きてェんだ』
白煙のこぼれる口が そう言おうとする直前に、ローはその重い口を開いた。
「この辺に、…ケーキ屋はあるか」