第31章 arousal
とくに難しい『おつかい』ではなかった。資料室の記録をめくり、記録用の子電伝虫に記録させる。極秘資料も在り処(ありか)さえ わかれば、なんてことはない。
シーザーが欲していた資料の内容は、“ベガパンク”の過去の研究に関するものだった。世界一の天才科学者 Dr. “ベガパンク” ─── パンクハザードでシーザーと共に研究に携わっていた経歴があるようだが、二人の間に何か因縁でもあるのだろうか。その関係に興味はないが、資料の内容には興味をそそられる。ローは時間の許す限り、記録しながら資料に目を通した。
(それにしても…野心家なヤツだ)
子電伝虫を胸元に潜ませ、裏側の港へ歩みながら、シーザーのことを考えていた。どこか嘘くさい、欲深いヤツではあるが、執念とも言える研究への姿勢は、頭が下がらないこともない。
現にシーザーが欲していた情報は、確かに この世界揺るがす可能性を秘めたもの ────
潮の香りが鼻をかすめる。
うつむいたまま、思考を巡らせて歩いていた。帽子で視界を遮っていたこともあり、すぐには気づかなかった。
『どこかの海賊団』のように“揃いの服”を着た搬送員らしき男達に囲まれていることを。
「貴様…、トラファルガー・ローだな!!」
「…なんだ お前達は」
数十人の人相の悪い男達が、ローを囲む。もはやコイツらは ただの搬送員ではないことは明白だった。
「『忘れた』とは言わせねェ」
「……」
男達は敵意をむき出しにして そう言うが、ローはざっと見渡した限りその中に知った顔はなかった。
(どこかで潰した海賊団か? それにしても なぜ搬送員に変装して…)
「…忘れた」
ローが ため息混じりにそう言うと、男達はブチキレたとばかりに武器を握りしめる。
「これでも思い出せねぇか?!」
「…!」
幾人かの男達が、着ていた揃いのシャツを捲りあげると、その胸には ぽっかりと四角い穴が空いていた。