第31章 arousal
「痛ェのか」
浮かない表情でアザを触るアルコに気づいたローは、そう声をかけた。
「大丈夫」
アルコは誤魔化すようにゆっくりとベッドから足をおろし、立ち上がった。
この部屋の丸みを帯びた壁沿いには、2つの窓がある。ベッドの横の窓は、雪山がみえる“白い”窓。アルコはもう1つの窓に歩み寄った。こちらの窓は、“赤い”窓。雪の世界の向こうに湖のような場所がみえて、その先には遠くに赤い炎が揺らいでいるようだった。
あの湖の水は
熱いのかな
冷たいのかな
コートを脱いで手を洗い終えたローが歩み寄ってくる気配を、アルコは窓の反射で知る。
左腕を持ち上げられるので、されるがままにされる感触を噛みしめた。
「こんなに痩せて…」
なぞるように触れられるので、アルコはくすぐったさに肩をすくめた。
「何か…、食いてェものは」
そう問いかけるローに振り返ってから、流し台に目を向ける。
簡易のコンロと最低限の調理器具が置かれたそこには、加工された肉や魚など様々な種類の缶詰と、乾いたビスケットのようなものの袋が積み上げられている。
ほとんどの野菜はすでに細かくカットされて冷凍されているもので、大体はスープとなり、どんなに工夫しても同じ味と食感になっていった。
「大丈夫」
「甘いものか…、それか果物は」
「…大丈夫だよ」
「遠慮するな。どっちがいい」
鋭く問いつめるように言うので、アルコは根負けした。
「じゃあ、…両方」
それを聞いて、ローは満足そうに笑った。