第31章 arousal
──── 1週間後
食事も食べられるようになってきた。一人で立ち上がり、歩けるようにもなってきた。体重も少しずつ戻り始めていた。
ベッドを窓辺に移動させてもらってからは、アルコは毎日飽きもせず窓の外の白い世界をみていた。
ここの“白”は ────
冷たくて、厳しいな
雪の合間から山の岩肌が覗いている。止むことのない吹雪。その吹雪の向こう側には、得体の知れない大きな生き物の気配が時折 感じられた。その気配は1つだけではない。ここは見た目の印象とは違って、本当は賑(にぎ)やかな島だ。
ローの説明には無かった この島の“生き物”や“人達”の存在が、“白”によって覆い隠されている。
アルコはそのことに気づいていたが、ローに問いただしはしなかった。
だって
“なんにも言ってくれないこと”が
それが彼の“いつもの優しさ”だから
それが彼と私の“いつもの距離感”だから
『お前の想いには 応えられない』
私達の“その距離感”は
私には縮めようがないんだから
近い過去から逃げるように、アルコは遠い過去へと思いを巡らせる。
パンクハザードを包む“白”を眺めながら、故郷であるフレバンスの“白”を思い出していた。
あの“白”は ────
キレイで、温かみがあったな
人工的な“白”ではあったが、輝きと温かみがあった。懐かしさに多少補正されているかもしれないが、アルコにはそんな風に思えた。
それに故郷の“白”は、今はもう失われてしまって、想い出の中にしか存在しない。
自分とローの中だけに
その事実が、温かみを生んでいるのかもしれない。だって、今まで ずっと恨んでいたハズだ。
故郷の“白”を
自分の身体に刻まれた“白”を
アルコは左腕の白いアザに触れた。
“コレ”があるから、ローの側にいられるなんて
“コレ”があるから、優しくしてもらえるなんて
勝手に潤み始めた瞳のままで左腕のアザを触っていると、ローが部屋に戻ってきた。