第8章 衝動 【マリンフォード 頂上戦争】
その日の夜、アルコは しっかり高熱をだした。
─── あつい。熱くて寒い。寒いけど暑い。
治療のせいだ。熱出るかもって言ってたし。絶対、治療のせい。他に理由はない。
アルコはシーツをかぶって、自分に言い聞かせる。
実際、高熱は治療のせいであることは確かだろう。しかし思考とともに、繰り返しやってくる顔の火照りと動悸の激しさは、明らかに他に原因がある。
─── あのヤバそうな見た目で……なんだよ、あのキスは…! 優しすぎるだろ!!
今度は怒りが こみ上げてくる。怒りというより、がらにもなく心を乱されていることへの八つ当たりに近い。
─── はぁ…キスくらいで……やめよ、深く考えるのは
そう心の中で言い捨てて落ち着きを取り戻すが、数分後には また思い出し火照ったり、怒ったり、照れたり。高熱でぼんやりする頭に、行き場のない思考が追い討ちをかける。
『これだから、女は困るな』
ゾロの 声が聞こえたような気がした。
『男だから』『女だから』『関係ない』と言いつつも、いつもアイツが一番こだわっているような気がする。現に、ゾロは一緒に旅をしている間、自分には一度も手合わせを挑んでこなかった。
『敗けるのが嫌』なのか
相手が『女だから』か
それともその『両方』か
アルコは、心の中のゾロのおかげで冷静さを取り戻す。
こだわってるのは、自分も ─── か
悔しいけど…今回ばかりは ありがたい
───悔しいけど