第31章 arousal
──── さらに2週間後
ローはこの島に住む元囚人達のうち、望む者すべてに“足”を与え終わった。
それは ローが このパンクハザードに滞在し、自由に動く条件と引き換えに提案された“取り引き”のひとつだ。
過去に起こった化学兵器実験の事故により、実験体にされていた囚人達が この島には大勢いる。有毒ガスによって下半身の自由を奪われ 見捨てられた囚人達を、シーザーが科学の力で救ったようだ。
さらなる自由を望む者には、“オペオペの実”の能力で、動物の足を与えた。
大仕事をひとつ終えたローは、アルコの眠る部屋に戻った。
扉を開けると、暗さと静寂と寒さが部屋を包んでいた。ローは白い息を吐き出す口元をコートに埋め、アルコを見下ろす。
──── 頼む
幾度なく見続けている その変化のない無表情な顔を、祈る想いでみつめた。
もう…、限界だ
頼む
目を開けてくれ
声が聞きたい
笑顔が見たい
あたたかさに触れたい
演奏が聴きたい
演奏している その姿がみたい
「…アルコ」
ローは指の背でアルコの唇に触れた。わかってはいたが、やはりその唇は ポケットに入れていた自分の指よりも冷たくて、ローは絶望感に飲み込まれないようにするのがやっとだった。
やめてくれ 本当に
そんな風に
まるで
死んだように眠るのは
もし
目を覚ましてくれるなら
おれは なんでも
アルコが望むなら
おれは なんでもしよう