第31章 arousal
「冷やせ」
「……は?」
シーザーの言っている事が予想外過ぎて思考が追いつかない。ローは思わず うつけた声を出した。しかしシーザーはその主張を変えず、真剣な表情のまま続けた。
「反応をみながら…、25度まで冷やせ」
「お前…、何言ってる。殺す気か」
「お前こそ、この女を殺したいのか」
「?」
バカなのか…、このガス野郎は
おれがアルコを殺したい訳がないだろう
しかし臨床においては自分より経験がありそうなシーザーに毒づくことはせず、その根拠を待った。
「この女の…身体か心か知らねェが、“欲してること”をしてやれ。一旦、しっかり“冬眠”させてみろ。体温が25度まで下がるように室温を調整して、部屋も暗くしろ」
アルコが
“欲していること” ────
ローはシーザーのその言葉に目を見開いて驚いた。
考えもしなかった
アルコを“目覚めさせること”に必死で
眠りが長引けば長引く程、とにかく目覚めさせることばかりに思考が囚われていた。
単純で、正当で、客観的な その対処法に気づかなかったローは、自分自身に対して苦い顔をした。
いや、しかし
今の段階で気がついてよかったとも言える
「殺したくなきゃ、バイタルはモニターしとけよ。ことが足りりゃあ…反応するだろ。そうなってから ゆっくり温めろ」
「あぁ…、やってみる」
シーザーに礼を言うべきか。
ローは迷ったが、結果が出てからでもいいだろうと思い直し、身体の一部をガスにして燻(くゆ)らせながら部屋を出て行こうとするシーザーを黙って見送った。
扉を出ていく直前にシーザーはローを振り返り、妖しく笑いながら告げた。
「シュロロロロロ…、気付け薬は作ってやる。スッッゲェー効くヤツをな! その代わり ────」