第31章 arousal
身体の痛みも
心の痛みも
負けたくないのか
悟られたくないのか
傷ついた時に…、いや時に傷つく前に、過剰なまでに気丈に振る舞うアルコのそのクセが、切ない程に いとおしい。
しかし、その“彼女らしい”部分が、彼女自身の心と身体を傷つけている。
『預けろよ。
もっとおれに、手放しで』
おれにも 背負わせて欲しい
出来ることなら
アルコの感じている
その“痛み”を ────
ミストリア島のあのホテルの部屋の黄色い椅子に座り、静かに、楽しそうに、穏やかに過ごしていたアルコが思い出された。バルコニーの椅子に座って竪琴を鳴らしている時は、それを中断させたくなくて、部屋に入ってからも気配を消し続けた。「帰ってたの」と言って振り返るまで、心にしみる その音を堪能し、霧に揺れる黒髪を眺め続けた。
島の祭りが始まるのをあんなに楽しみにしていたのに…、それを待たずにアルコは眠りについた。
ローは それが不思議でたまらなかった。
しかし彼女の中に、自分の理解しきれない部分が存在することを…
ローは
嬉しくも
悲しくも
悔しくも
愛しくも
思った。
多くは望まない
そもそも おれには ────
やるべきことを 何ひとつ成し遂げられていない今のおれには
アルコの“心”を望むなんて
そんな資格はない
ただ
おれの願いは
ただ ひとつ
ローは着ていたコートとシャツを脱ぎ捨てた。アルコのはだけさせた胸元に肌を触れあわせ、祈るように目を閉じる。
「頼む…、アルコ。
…起きてくれ」