第30章 in the fog 【後編】
*
二日後
小型の船を購入した。
部屋に戻ってもアルコはまだ起きる気配はない。
自分の肩の傷の治り具合を確認した後、ふとアルコの怪我も気になった。
『これは、大丈夫。本当に かすり傷』
彼女の右腕の包帯を外した。そこには3本の深い傷が刻まれていた。
「どこが かすり傷だ」
頭を抱えて悪態をつきながら、反対側の包帯も外してみて驚愕した。こちらの腕にもまったく同じような3本の傷。
──── なんだ コレは
爆発事故の傷か…?
何かに挟まれたような
いや、引っ掻かれた…というよりは まるで糸が食い込んだような…
謎の嫌悪感がこみあがるが、アルコは相変わらず起きる気配もなく、問いただすこともできない。
今さら縫合の必要もなさそうなので、せめて消毒をして新しい包帯を巻いた。
アルコの肌は、いつもの睡眠時よりも一層冷たく感じた。
(これは…、長く眠りそうだな)
しかし
立ち止まってはいられない
アルコと出会って1年半が経とうとしている。出会った当初の“珀鉛病”の進行によるリミットの見立ては『あと2、3年』。しかし進行具合によっては早まる場合もある。
過剰なアレルギー反応の示すアルコの体質を考慮しつつ、出来る範囲での治療を進めてきた。それでも『治療』と『進行』の一進一退。
治療設備や万一のショック反応を考えて、みえる範囲・把握できる範囲での治療をだましだまし続けてきたが、そろそろ限界だろう。
一刻も早く、設備の整ったところで、体内と左腕の治療にかからなければ。