第30章 in the fog 【後編】
「うまかったよ…、ありがとう」
ローはアルコの ほほに触れた。
そこにあった彼女の自由を奪っていた“白いアザ”はもうなくて、ローはそれが嬉しいような寂しいような複雑な気持ちになった。
顔のアザが消えて、またひとつ“呪縛”から解き放たれ自由に近づいたアルコ。自由になって欲しいと思う反面、そうなると自分の側から飛び立ってしまうのではないかという、不安でどうしようもなく寂しい利己的な気持ちがせめぎあう。
「…好きだ」
この言葉を使えば、“自由”になった彼女を新しい“呪縛”で縛ることができるのだろうか
そんな自分勝手な想いは、受け入れてもらえるだろうか
いや、きっと受け入れては くれるだろう
しかしそんなアルコの“優しさ”につけこむようなことで、本当に彼女の“心”は手に入るのだろうか
今の自分には、眠っている彼女にしか想いを伝えることができない。ローは そんな自分の弱さにあきれた。
何よりも 大切で
誰よりも 愛しい
だからこそ おれは ────
なぁ、コラさん
コラさんの残してくれた言葉は
おれを“救い”もしてくれたけど
いまだに おれを“縛り”もしてるよ
おれはどうしても『あの時』のおれと同じ思いをアルコにはさせたくない
それに…
今さら口にしなくても“それ”は
“おれの想い”は
伝わっているハズだと思うのは
都合が良すぎるだろうか