第30章 in the fog 【後編】
*
チャイムが鳴ったような気がしてローは目を覚ました。
身体を起こして辺りを見渡す。
霧のかかった曇り空はしっかり白く、時計をみるともう昼を過ぎていた。アルコは隣のベッドで静かに眠っていた。
再びチャイムが鳴った。ホテルの部屋に訪問者が来たことを告げるチャイムのようだった。この部屋にそんな機能が付いていることに驚きつつ、ローは下だけ履いて扉を開けた。
髪の短い若い女が、大量の服を抱えて立っていた。女は少し慌てながらアルコの名前を口にした。寝ている、と告げると頼まれていた服を届けにきた、と言ってサインを求められたのでそれに応じ、服を受け取った。
大量の服やコートを、先ほどまで自分が寝ていたベッドに放る。コートには、船のシンボルマークやハートを意味する文字が刻まれていた。
アルコが頼んだのか?
それともおれが? 直接…?
まさに自分のために用意されたような服。その経緯が思い出せないことに、少しの違和感を感じた。
水を汲んで、窓辺の黄色い椅子に座る。テーブルの上には紙袋とリボンがかけられたお菓子にメモが添えられていた。
『いつも ありがとう
これはお礼
よかったら 食べてください
たぶん しばらく眠ります
心配しないで
あなたは どうか自由に』