第30章 in the fog 【後編】
処置を終えたローの身体を労うように、アルコはその手を握って撫でた。
「もう少し 休んだほうがいい」
「ああ」
おまじないのようにローの手をポンポンと優しく叩き、アルコも自分のベッドに戻って朝まで休もうと立ち上がったが、離れていくその手首をローに取られる。
「アルコ…」
弱々しく絞り出すような声で呼ばれ、アルコは動きを止めた。明らかに弱っている様子のローは、アルコの手にガックリとうなだれるように顔を伏せた。
「…側にいてくれ」
その言葉に、アルコの胸の鼓動のポンプが熱く動きだした。目尻に熱く滲(にじ)んだ涙は、部屋の暗さで気づかれないだろう。アルコはそのことに感謝した。
アルコはベッドにあがってローの頭を胸元に抱きしめた。静かになった部屋には、外の祭りの音が聞こえてきた。
「ああ…、祭りが始まってるのか。…見に行くか?」
──── その約束は
忘れてないんだ
今朝に限ったことじゃない
この島に来てから、幾度となく話題にしたことだから
アルコは首を横に振って、微笑みながらローを見下ろした。
「行かない。今はこうしていたい…。ローの側にいたいから」
そう言って どちらからともなく唇を寄せた。