第8章 衝動 【マリンフォード 頂上戦争】
「弾いていい?」
「頼む」
──── 丸い窓
ぶくぶく ぶくぶく
深く沈む
青から藍へ
まだ旋律がない 長い夢からイメージした曲
再び、1音1音 重ねていく。
ローは使い終わった器具を片付け終えると、ベッドサイドの椅子に座りベッドの上に手を組んでほほを乗せた。
治療で能力を使ったので疲れたのだろうか。弦糸の線が はじかれて面になるのをぼんやりと目で追っている。
──── 眠いのかな?
響き続ける和音に、和音と同じ構成の優しいアルペジオを加える。
ゆっくり
正確に
アルペジオを左手に任せて旋律を加えてみる。
メロディアスで
懐かしいような
故郷の街並みのような
ちらりとローのほうをみると、まばたきの間隔が長くなってきている。
──── これは、いいかもしれない
アルコは竪琴の演奏ではとうていお礼にならないと思っていた。しかしこんな風に彼の心と体を癒すことができるのなら、十分お礼になるのではないか。
ローは見るからに慢性的な寝不足っぽいし、その意味でも“健全な”お礼だ。
しかも、ローの前ではグローブ無しで弾くことができる。
アルコは嬉しくなり、演奏にさらに集中する。
旋律の途中、高音から階段状に下りてくるリフにだけに3度のハモりを重ねる。
──── ああ 気持ちいいな
弾きながらうっとりと目を閉じ、唇は半開きの恍惚状態。“健全な”気持ちよさに浸る。