第30章 in the fog 【後編】
「だから…、今日の記憶を、全部奪って」
アルコは大剣を胸の前で素早く払ってから、その刃をプリンに向けた。
「そうしてくれたら…、私は抵抗しない」
「女…、おれがいる限り“脅(おど)し”は無意味だぞ」
「…じゃあ 脅さない。
あなたに…、“お願い”するわ、プリン」
アルコはその場に剣を捨てて 膝をつき、両手を胸に当てた。
「…なんの真似だ」
「いいわ」
プリンがカタクリの言葉を遮り、承諾した。
「『忘却』…、それがあなたたちの運命(さだめ)だものね」
「ありがとう」
アルコは閉じていた目を開けて深々と頭を下げ、プリンに感謝を表した。その肩は震えていた。
「なんのことだ」
「いいのよ、兄さん。ママの指示は海軍と…、七武海及びその配下の500万ベリー以上の元賞金首。彼女には賞金首の記録はない。私達の邪魔にはならないわ」
プリンは再びラオGの記憶の編集作業に取りかかる。
アルコは傍らにあった ローが能力で斬り落としたラオGの右腕を拾い上げ、その老体にくっつけた。
それを見て、カタクリは手元の資料に目を落とし、積み上げられたアルビダ達と倒れた海軍の人垣を見渡した。
「……大仕事だな」
アルコはうつ伏せで倒れているローに歩み寄り、その姿を茫然と見下ろした。
両腕から流れる血を拭いもせず
安堵と
悲しみと
嫉妬と
痛みと
後悔と
複雑な表情を浮かべて ────