第30章 in the fog 【後編】
「やはり お前は利口だな、ロー…」
「ただし、“条件”がある」
「……」
ローの提案にドフラミンゴの ひたいがピクリと反応した。ローが“その条件”を口にすると、ドフラミンゴの表情は段々と冷えたものになっていく。
「おれが育ててやった3年間より、今ここで この女を逃がす一瞬の恩の方がでかいってのか…? 妬けるねェ…」
「ロー…」
ローの提案は、アルコが予想した最悪なものだった。
ローは
私だけ 逃がそうとしている
私だけ 生かそうとしている
「しかし、わかっているだろう。お前が何と言おうと、おれがその女も逃がす訳がないってことが」
「おれに嫌々従わせたいのか。それとも喜んで従わせたいのか」
「結果は同じさ…。確実にお前を“ファミリー”に迎えたいだけだ。
…つまり、女も逃がさない。お前も連れ帰る。
“お前”が“おれ”なら、そうするだろう?」
「……」
絶望した。
ローと一緒にいたい
どんな状況でも
でも ────
『お前の想いには 応えられない』
アルコはローの後頭部を見詰めながら、つい先ほど ホテルの部屋で彼に言われた言葉を思い出していた。たった数十分前の出来事のハズなのに、遠い昔のことのように思えた。あの時 抱きしめたローの頭が、血や土で汚れているのが悲しかった。
ローは私に対して特別な感情を持っている訳じゃない
いくら優しい彼でも こんな私に対して、自分を犠牲にするようなことをして欲しくない
自分の『信念』を ────
だって、彼にとってはドフラミンゴを討つことは旅の目的のひとつだったハズだ
あの時
グレート・鰤(ブリ)テン島へ向かう船の上で
上弦の月明かりの中で
彼の持つ“D”の名前とともに、そう話してくれた
このままじゃ、私は ローにとって ただの『重荷』『足枷』
私の想いに応える気がないとわかった今、ローに望むことは ただひとつ
どうか 自由に ────
アルコは このままローの決断に従うことに、抗(あらが)う決意を固める。立ちふさがったローに隠れて、剣の柄を握り締めた。
もうやるしかない
何もかも メチャクチャに
出来る限りの力を振り絞って
いっそ 私が力尽きてしまった方が
あなたは 自由に ────