第30章 in the fog 【後編】
「知っているなら話は早い…。この女に手を出せば“鷹の目”が黙っちゃいない。“あの男”を敵にまわせるのか…?」
肩の出血を押さえながら立ち上がったローは、ドフラミンゴ越しにアルコを見据えている。
(逃げろ。アルコ…、お前だけは…!)
(だめ。ローも一緒に…。でないと、私は逃げない)
「虎の威を借る…、いや“鷹の”威を借るか。小せェ男になったもんだな、ロー」
「何とでも言え」
「ハッ…、それほどまでに大事か。この女が」
アルコの振りかぶった腕は不自然な動きのままピタリと止まった。
「無駄なことはするな…」
「うっ…?」
ドフラミンゴの指の動きに合わせて、アルコは剣を下ろした。いや、下ろさざるを得なかった。
身体が動かない
まるで操られているみたいに…
「─── “シャンブルズ”」
視界が急に変わったのと同時に、アルコの身体は自由になった。
ローがドフラミンゴとアルコの位置を入れ替えたのだ。一瞬で状況を理解したアルコは膝をつくローを支える。ただでさえローの能力は体力を消費する。彼はもう限界にみえた。
「ロー…、もう、ここは一旦…」
「言ったよなァ…? 無駄なことはするなと…!!」
先ほどまでアルコがいた距離から、ドフラミンゴは両手で宙を掻く。
網の目状の斬撃が迫り来るのに備えて、アルコは剣を構えた。
ローをかばうことを優先したため、斬撃はアルコの両肩に3本ずつ鋭いピアノ線が肉に食い込んだような跡を残していった。衣服とともに血が舞うが、アルコはまったく気にする様子はなく、ローを再び支える。
「ロー…、もう一回だけ、能力で。離脱しよう」
「…あぁ、…いや、」
この期に及んで歯切れの悪い返事だ。
叱咤(しった)しようかと思ったところに飛んできたのは、別の叱咤と鉄拳だった。
「この、恩知らずの小僧がっ!!」
「───!!?」